伊勢うどん 2005年03月14日

伊勢名物の一つに「伊勢うどん」があります。
ずんぐりと太めで、コシの柔らかなうどんに、独特の真っ黒いタレをかけただけの素朴な伊勢うどん。高級店で食べるのではなく、割り箸がむき出しの大衆食堂で椅子を引き寄せながら、薬味のネギのみじん切りをのせて、ぐるぐるとかきまぜながら食べる伊勢の名物うどんです。
以前は伊勢市内だけのものでしたが、最近は鳥羽や志摩、松阪方面にも看板が見られるようになり、スーパーや八百屋、食料品店にはあの独特の「たれ汁」のびん詰めが売られているほどの普及ぶりとなりました。

伊勢うどんの発祥は明らかではではありませんが、多分江戸時代以前から米の生産の少ないこの地方の農家が、うどんを多く食しており、その際に味噌溜りを少しかけただけの簡単な調理法を取っていたものと推測されます。伊勢麺類業組合長宇田栄一氏(明治四三年)の話でも、昔は伊勢うどんの商いは宮川から二見までの神領(宇治・山田)民だけに限られていたものなので、楠部や朝熊など四郷の農家が溜りをかけて食べていたものを、かつお節や昆布のダシを加えて美味しくして商売にしたのであろうということです。
伊勢うどんを初めて商売として始められたとして有名なのが浦田町の橋本屋さんです。先祖は神宮の神楽役人、小倉太夫で、うどん屋として始められたのが七代目の小倉小平さんと伝えられています。小平さんが没したのが寛永二年(一六二七)。少なくとも三五0年前に「伊勢うどん」は実在したようです。しかしこの「伊勢うどん」という名称はずいぶん新しいもので、戦後、商店も商品も増えるなかで他の細いうどんとの混乱を避けるため、昭和40年代後期に『伊勢うどん』名付けられました。
それまでは、伊勢でうどんといえばこのずんぐり太い伊勢うどんだったのです。
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